最後のブログ(仮)

90年代以降作り散らしたblog的なものの最後

鬱だったわけだが

「目標を持つ」というのは、今をより充実したものにするための一つのテクニックである。だから、矛盾するようだが「目標」とはそれ自身は手段であり、目的ではない。だからその内容はあくまで便宜的なものでよく、現在を充実させるにふさわしいものであることが大切である。
その「目標」の立て方はなかなか難しい。
しかしこの2ヶ月で一つわかったことがある。それは遠くの目標を定めずに決めた至近の目標、つまりトップダウンでなく、ボトムアップだけから出てくる目標は、あまり効果的でないということだ。

それはたとえば「今期売り上げ2000万円」などのような目標である。それがダメな理由はなにか?それは「夢がないから」。これに尽きる。つまり、合理的であり、定量的であり、現実的であり、達成可能であるから。つまりSMARTであるから。言い換えると、でたらめさ、不条理さがない、つまり魅力がない、ということだ。

合理的なものや定量的なものは、基本的にロジックの積み重ねによって達成可能である。つまり、それを達成するために日々行うべきことは何かと言うと、地道なロジックの積み重ねというある種の単純作業である。そして単純作業の繰り返しは、ある段階で怠惰を生む。つまり、「この繰り返しをやっていれば目標達成、一丁あがり!」という思考停止状態である。

−ひとりで会社をやる場合の危険性はここにある。経営者という、まさに非定型業務を絵に描いたような仕事と、営業担当という定型業務や、技術者という別の意味での単純作業、これらを一人に同居させなければならない。メタに見れば非常に混沌としていて面白いのだが、現実の日々の仕事では、技術者である時間がメインにならざるを得ない。そこで、音楽を演奏するかのような一回性の仕事であれば純粋に楽しいのだが、単調さを伴う定型処理が発生すると俄然、キツくなってくる。誤解を恐れずに言えば、「設計→コーディング→テスト→納品→運用」というソフトウェアのサイクル自体が、最悪、単調な定型業務に成り下がるのだ。−

だがそうではないだろう。私が充実した毎日を過ごすのに必要な目標はそういう目標ではないだろう。ではなにか。

「今期売り上げ2000万円達成」はいい。それ自体を否定するわけではない。問題は、それがどういう長期目標、言い換えるとミッションから帰納されたものかということである。つまり、その先にはどういう夢があるのか?ということだ。今の私はそれを見失っている。

夢という得体の知れないものを具体化し徐々に現実に変えていく過程が人生なのだ。違うかもしれないが。だから一番遠くに見える夢は、合理的なものであってはならない。そうであればもう答えは見えてしまっている。いや、たとえ見えていなくても、見えてしまうことがわかってしまっている。

もし「今期の売り上げ」と言う数字だけを目標として追求した場合、他のものも失う。それはなんだ?とにかく無理やりでも売りさえすればいいのだから、顧客満足も低下するだろう。重要なのはもしかすると、金のことしか目にない人間に自社の大事な仕事を任せるか?という点かもしれない。私のやろうとしている仕事で一番重要なことは何か?それは顧客の満足感や喜びであり、自分自身の満足である。

いま一度思い出すのはかつて私が所属していた野村グループの社訓「顧客と共に栄える」である。15年ほど前の入社当時は愚かにも「け、古臭いことを。」と思っていたが、今その価値を知る。

なぜこの顧客と仕事をするのか?どういう顧客と仕事をするべきか?どういう仕事をすればいいか?

すべての答えはここにある。共に栄えたいと思う顧客と、共に栄えることができるような仕事をすればいい。そう、栄えるのだ。栄えるという言葉には、勝利とか成功とかそういう言葉だけでは表せない意味がこもっている。より幸福になる、と言ってもいいかもしれない。単純に勝ち負けではなく、成功失敗だけでもない。ハッピーになると言うことだ。幸福、いわゆるハピネスだ。

私と一緒に仕事をして良かったと思え、そして私も、その顧客と仕事をして良かったと思える、そういう相思相愛の関係を作ること。常に120%の満足を提供することはできないかもしれない。ときには60%になることがあるかもしれない。しかしオーバーオールで100%を超える満足を提供するべく、最大限の努力を重ねること。

私の場合、男性の多くに見られる「困難に挑戦して勝利したがる」という性質はきわめて弱く、それよりも「愛するものを味わい慈しむ」という性質が強い。自分が日々充実するためには、自分の仕事の対象と、関心や愛情の対象が一致していることが望ましい。顧客に対する愛情だけでなく、顧客との間に生まれた仕事に対しても愛情を持つことができなければ、その仕事はきっとうまくいかないだろう。顧客と共に栄えることは望めないだろう