最後のブログ(仮)

90年代以降作り散らしたblog的なものの最後

Power of voice

4月の上旬から数えてほぼ1ヶ月半以上に渡って世界に話題を提供し続けている女性がいる。
48歳になったばかりのスーザン・ボイル(Susan Boyle)だ。


今年で3期目になる Britain's got talent というイギリスの才能発掘番組でセンセーショナルなデビューを飾った。
容姿に恵まれない上に、服装もぱっとしない中年で、登場したとたんに審査員も客席も「やれやれ…」となった点、歌い出したとたん会場の空気が一変した点、どちらも同番組1期優勝者のポール・ポッツを彷彿とさせる。


スーザンは教会ボランティア(要は無職)で長年歌手になりたかったものの機会に恵まれず、この好機に飛びついたのだった。
歌ったのは、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の「夢破れて(I dreamed a dream)」。


ネットで知ってはじめて見た時は、おお!とは思ったものの、ポール・ポッツの時ほどの衝撃はなかった。
二番煎じ、というか、無理して盛り上げてるような気がしたからだ。
でもなんだか妙な違和感を感じて、同番組の他のオーディションを片っ端から見てみた。
それから、彼女の回も何度も見た。
同じ曲を歌っている他の歌手の歌もいくつも聴いてみた。
スーザンが憧れているエレイン・ペイジの歌も聴いた。


その結果、この会場の衝撃は本物だ、という確信を得た。なぜか?
おれ自身、スーザンは本当にすごいって思えたからだ。
サイモン・コーエルやピアーズ・モーガンが、惚け顔で見とれてたのは伊達じゃない。おれもきっと同じ顔をしていたはずだ。
激しく心が揺さぶられる。その瞬間、恋に落ちている。いつの間にか涙目になってる。


そのスーザンが、つい昨日準決勝進出が決まった。このとき歌ったのが、ミュージカル「キャッツ」の名曲「メモリー」だ。
今回は全世界からの注目を一身に集めていただけに、緊張があったのか歌い出しで音程を外してしまった。でもすぐに立ち直り、堂々とした美声を響かせた。細部には荒さが散見されるものの、あの美声はやはり至宝だ。

モリーって良い曲だってはじめて思えた。だから勢いでiTunesでエレイン・ペイジとサラ・ブライトマンというゴールデンコンビのを買ってみたが、スーザンの朗々とした感じが好きなおれにはちょっと違うチョイスだったようだ。だからいまだにYouTubeでスーザンのを聴いている。美しい声というのは、ひたすら心地よく、なんどでも、いつまでも聴いていたくなるものだ。


それにしても「私には夢があったけど叶わなかった」という歌を歌って夢を叶えてしまうなんて、かっこよすぎるだろ。それにこの歌詞、聴けば聴くほど胸に迫る。あ、おれも夢が破れてたんだなあ、ってことにやっと気がついたよ。おれの人生、これから続々といろんなことがタイムリミットを迎えるってことも思い出した。だから理性のブレーキをかけすぎず、もっと自分の本能や欲望を解放して生きていかなきゃ。もう遅いかもしれないけど。


ぼんやりしてちゃ、だめだ。な?スーザン。