1987年7月29日午後
犬吠埼に到着した。今夜はここではじめての1人
1人用テントは狭かったが、海が見える砂浜にぽつんと立ったテントの中にいるとこの上なく自由な気がした。ガス式の明るいランタンではなく乾電池式の薄暗いヘッドランプしか持っていなかったし、携帯電話はおろかポケベルすらなかった時代。1人で自然の中にいればせいぜい明日のルートを考えるか本を読むかしかなく、荷物をできるだけ減らすためにラジカセも持っていなかったので音楽すら聞かなかった。だから日が暮れれば波の音を聞きながら寝るしかないし、朝日が昇れば明るくて起きるしかない。*2
今となっては何を思って寝たのかはもはや思い出せないが、なにもかも初めてのことで疲労と興奮と緊張があったはずだが、きっと日没からそう遅れることなく寝たことだろう。