最後のブログ(仮)

90年代以降作り散らしたblog的なものの最後

青ヶ島へ

523日の夜にジョーさん宅に前泊し、24日午前5時半に羽田へ向けて出発した。

羽田空港の駐車場にクルマを停めて、ウチの家族で使っている中でいちばん古く大きなスーツケースをごろごろ転がしながらチェックインへ。キャスターの径が小さくしかも固定されているため極めて転がしづらい。ちゃんとした機材ケースに買い換える決心をした。そのまま自動チェックインしようとしたが、スーツケースの背が高すぎる上に重量オーバーのため係員のいる窓口に案内されたがなにやらジョーさんがごにょごにょ言ってあっさり終わった。それにしても彼と一緒だと荷物の重さやラウンジに関して実に自由が効いて本当に助かる。

搭乗口が予想以上に遠かったため、のんびり軽食をとっていたらギリギリになってしまった。さすがの彼も八丈島行きの飛行機に関しては経験不足のようだ。手続きの煩雑さの割に30分ぐらいで到着してしまい、拍子抜けだが、あの海の青さは何者にも換え難い。ジョーさんマジックのおかげで最後に乗ったにも関わらず荷物は一番最初に出てきて、すぐにタクシーを捕まえて港へ。運転手さんは菊池清恵(仮名)みたいな名前の女性で、とても親切。

青ヶ島行きの船を待っているとイマドキな若者が数名いてちょっと残念な気分だったが、別の船だったようでほっとした。NHKの撮影班45人組と、あとは個人客が数人。非常に空いていて揺れもほとんどなく快適だったが、どうやら就航率が50%ぐらいの荒めの海でこれぐらいの揺れだとベタ凪とのことだった。

青ヶ島が見えるまでは当然のことながら周囲にはまったく何もなく、ただ海と空のみの世界。ライセンスを取って自分で船を操縦できればこれぐらい何もない場所まで来て、ドローンを飛ばして空撮するのも、夜を待って満天の星空を撮影するのも自由なのだろうが、定期航路でしかも荷物のついでに乗客を乗せているような船ではとてもそんなことは叶わない。ぜひ船の免許は取得したい。

青ヶ島がぽつんと見えてきた。断崖絶壁だけど緑に覆われた島。とてもgoogle mapでは分からない圧倒的存在感がある。小さいけど大きい。島内の移動は地図では近く見えても高低差が激しいので意外と遠い。宿の主人が軽自動車で迎えに来てくれていたので荷物を積むと、そんなでかい荷物ならドローンでも持ってきてるんだろ、と言い当てられた。やっぱり旅行者はよく飛ばしているようだ。期待は高まる。

まずは地図上では近くにあった展望公園まで登ってみたが、坂が極端に急で難儀する。先日のハイキングほどではないが、呼吸が苦しくなりそうだったので、とにかくゆっくり登ることを心がけた。時間をかけてなんとか登るとカルデラの内側の丸山がよく見える展望公園に着いたので、写真撮影を開始。そして頃合いを見てドローンを飛ばしてみた。それで分かったことは、もちろん考えれば当然なのだが、外輪山からたとえば150mの高度で飛ばすということは、カルデラの底から見ると相当の高度だということで、操縦する側もその目も眩むような未経験の高さに緊張してしまう。しかも、飛ばし方によっては自分よりも低い場所を飛ばす訳で、これもまた初体験。編集は必要だと思うが、少しは面白い映像が撮れたのではないかと期待している。展望台で船で一緒だった男性と出会って少し話をしたら、夜も星を撮影に来るとのこと。青ヶ島に行くと決めて購入を決断したSIGMA14mm f1.8のレンズカバーを早速失くしてしまったのを一緒に探してくれた上に、帰りはレンタカーで宿まで送ってもらってしまい、大変助かった。その節はありがとうございました。

夜は頭にヘッドライトを点けて同じ道を登ったが、1回目の時よりも遥かに余裕を持って登ることができた。そういえば昼食も夕食ももりもり食べられたし、どうやら荒療治を経て体調が回復してきたようだ。

展望台でまずはInsta360 Pro2での星空撮影を試みる。しかしやはり富士や阿智村の時と同じように、ぽつぽつとしか写らずどうにも「映え」ない。青ヶ島の晴天の夜空でこれということは、どこに行っても無理だと判断せざるを得ない。以前友人のクリニックの撮影をした時は非常にクリアな映像だったので、やはり明るいところで撮影する素材向けのカメラだということだ。これは根本的な方針転換が必要だ。

一方、14mm + ソニーのミラーレスは非常によい撮影ができたと思う。あとで大きな画面でみて見ないとなんとも言えないが、天の川はよく色が乗っていてとてもセクシーだった。ちょうど14mmの画角だと、丸山を含めたカルデラと下から水平に上ってきた天の川を端から端まで収めることができた。これでやっとスタート地点に立てたような気がするが、実は交換用のバッテリーを宿に忘れ、撮影中にバッテリーの残量がゼロになりそうだと言ったらジョーさんが宿まで往復してくれたからこそこの写真が写せたのでまだまだではある。しかもポータブル赤道儀のアリガタプレートも宿に忘れたのでガイド撮影はお預けだった。ただ、超広角で天の川中心にカルデラ自体も被写体にすることを考えると少なくとも今回は必要なかったとは言える。でも明日の八丈島やそれ以外の場所での撮影ではそうはいかない。

また、夜露がひどく、ベンチもカメラもレンズも雨が降ったかのようにずぶ濡れになった。買ったばかりの高級レンズだったが、背に腹は変えられないのでブロワで水滴を飛ばした後にタオルで拭った。こういう時のためにレンズ拭きは必携だ。次回以降の課題。

11時を過ぎて月が上ってきそうな頃に撤収し、展望台から降りた。下りは駆け下りるぐらいのスピード。降りたところでちょうど海面から登って来た月が見えたが、水平線は靄の向こうだった。

12時前に寝ると、今度は4時起きで日の出とドローン撮影だ。海に近い絶壁の一番上にある展望台に行き、日の出の撮影をするが、超広角レンズの画角だといつもの感覚では構図に入らないようなものまで入ってしまい、位置取りに苦労した。ドローンは水平距離制限の設定を200m500mまでに変更して東に向けて飛ばして撮影した。断崖絶壁を海側から撮影できたはずだが、これも海面からの高度がすごいことになっているはずで緊張したが、あとで見るのが楽しみだ。

宿に帰って寝たが早めの昼食を用意してくれたのでそれをいただき、島の話などを聞いて港へ向かった。昨日来たばかりとは思えないぐらい久しぶりだ。船では船室にいてもおもしろいくないので、甲板でひたすら空や海を眺めていた。青ヶ島丸の作る航跡を飛び越えるようにイルカが何頭か互い違いにジャンプしたが、見とれてしまってカメラを取り出すのが遅れた。慌てて撮って遠くに小さく写せたが、脳裏のイメージのほうが遥かに鮮やかだ。

八丈島でレンタカーを借りて島の北東岸にあるホテルに投宿したが、今までエネルギーを前借りしていたらしく、食事をして風呂に入ると、夜の撮影には出られずに寝てしまった。