最後のブログ(仮)

90年代以降作り散らしたblog的なものの最後

🐻と🤔のちがい

甲状腺ホルモンが止まって入院した時に読んだ看護学の本の最初の方で、人間は植物機能と動物機能でできていると書かれていてはは〜んと感心した。植物状態というのはそういう意味かと。あともう一つはヒトはレイヤー構造として理解することができて、最下層に植物層、中間に動物層、そしてこれは勝手に追加したが最上層に人間層が、ISOの7階層モデルのように積み重なっている。人間層ってのは大脳新皮質という薄っぺらい部分だけに宿っている、人間固有の能力や性質で、言語や論理などの知的能力を支えていて理性や理念などの出所だ。

生命維持を司る植物層が不調を来たせば当然その上位層である動きを司る動物層の活動にも支障があり、その結果、ナビゲーションシステムである人間層にも悪影響が出る。逆もまた然り。これは当たり前のようだが、結構多くの人が人間層に発生する不調はそこだけで完結していると思いがちで、下の方のレイヤーに対して目を向けなかったりする。コンピュータでもソフトウェアの不調がメモリの不具合や電源容量の不足だったりする場合もあることを考えれば、人間においてもまったく同じだと言える。ただもちろん各レイヤーや各パーツだけで完結する問題も多いから病院は成立する。

そして各レイヤーのバランスは人によって異なっているはずで、それらのバランスによって性格も異なったりする。とりあえず植物層は置いておいて、最近のPCで言えば複数のOSが走る共通のハードウェアを構成するチップの異なり、みたいなものが動物層にはある。

動物層までへのリソース配分が高い人は、人間層は比較的シンプルなものに収まりがちだ。高度なアルゴリズムや思考よりも辞書的な蓄積をベースとしたパターンマッチングで問題解決をする。高学歴(偏差値的意味での)の人にも多く、新たな問題を解くためには新たな知識を必要とする。帰納トライアンドエラーから自分なりのアルゴリズムを構築するよりも、外部の力を利用してでもいいから問題解決すること自体を目的としている。

動物層までが優位な人(🐻)はナショナリスト的で、身内は大事にするがその外は敵として攻撃し、また、個は全体に奉仕すべきだと考える。男女にはそれぞれ役割があり、オスは外で仕事をして家族の糧を得、メスは子を産み育て家族の食事や家庭を整えるべきと考える。それは動物としては合理的な振る舞いだろうし、他人を身内の延長として包摂できる限り、思いやり親切に振る舞える一方で、感情的に受け入れられない他者や身内は、排除したり攻撃する。

一方、動物層よりも人間層が優位な人(🤔)はリベラルで、地縁血縁などの身内かどうかよりも理念やルールや合理性を重視する。どう考えても地域の掟ではない概念を持ち込んだりする。自分の欲望よりも人権を優先すべきと考えるし、全体よりも個を優先すべきと考える。そして頭でっかちとか冷たいとか言われがちだ。だが成長と共に「情が大事」を感情の発露ではなくルールとして学んで上手に身に付ける人もいる。

なぜそうなるか?🤔は🐻と比べて身体能力が劣るので、幼少期は体を使って遊ぶよりも本を読んだりひとり遊びをする時間が長い。手近な機械を分解したりもする。本や機械の効用というのは絶大で、自分を中心とした数メートルと数年の範囲の時空を超えて、数千キロメートル先の数百年前の人の、それこそ自分のリアル体験を遥かに超越した想像を絶する経験や思考や事実を身に付けることができる。その知識を足場にものを考え、天文学的な存在にもさらにそれを超える超越性にも思いを馳せることができる。それによって半径数メートルの世界で生きている🐻達の思考や振る舞いには限界があることを早々に知ってしまう。そのためしばしば友人や教師や親の考えを超え(たような気がして)、自分自身を孤立に追い込むこともある。とはいえその知識を元に自分の足元の現実を変革する力があるわけではない。

一方、🐻はその逆だ。きっと友達が多く親とも仲が良く、TVの芸能人やキャラクターが好きで面倒見が良い。スポーツも得意だし人気者。でも数メートルの範囲内でのみ正当化される仲間の掟に反する「人権」のようなものには理解を示すのが難しく、知らない誰かよりも知っている誰かを守ろうとする。自分の身体性に依拠した判断が優位で、頭でっかちな🤔は友達としてはいいが、考えていることには同意できない。ただ集団をより良い方向へ導こうという意思はある。

実際にはこの🐻と🤔の間には無限のグラデーションが存在していて、どちらかというわけではなくその間のボヤけたどこかにナショナリストリベラリスト(この区分が妥当かどうかわからないけど)の境界線があるのだろう。もちろんそのような左右軸の対立構造以外にも質の上下という縦の軸も存在するが。

人間を構成する要素、というか人間が人間を理解する上では要素に還元するしかないからだが、はたくさんあって分解する角度によっていろんな分解の仕方がある。ただ植物層や動物層などの物理層が人間層に影響を与えることは間違いない。身長の違い、体型の違い、性別の違い、人種の違い、血液型の違い、筋肉の質の違い、アルデヒド分解酵素の有無、性ホルモンの濃さ、など物理層のあらゆる違いが人間層に影響を与え、それがその個人の生存戦略にも影響を与えている。そう整理するとどんな人の意見にも一理を見出すことは可能だが、自分に対して攻撃してくるものは、とはいえ、排除したいのが私の動物層の反射神経だ。

家族内ではこういう性質が親に対するカウンターとして強化されたり、友人や配偶者には似てる部分と正反対の部分の組み合わせになるような相手が自然と選択されていたりする。面白いがめんどくさい。

人間が作っていないもの(厳密には存在しないが)はいい。人間と自然の中間生成物みたいな音楽もいい。